謹啓 木々の葉もあざやかに色づく季節になりましたが、みなさまには益々ご清祥の
ことと存じます。

 私、佐藤上は本年6月1日付をもちまして、40年2ヶ月の間お世話になりました
航空局を退職しました。在職中は、公私にわたりみなさまよりご厚情をいただき、本当
にありがたく深く感謝申し上げる次第です。

 思い起こせば、広島県福山市の電波高校を卒業後の昭和40年4月1日、大阪航空
保安事務所保安部通信課に両親に連れられて赴き、坊主頭の詰め襟学生服で今は亡き
神田通信課長に着任のごあいさつをしたのがみなさまのお仲間入りをさせていただいた
最初で、この時のことをつい先ほどのように鮮明に思い出します。課長が「佐藤君は
42年間勤められるなあ…」と若さを羨んで、私自身もまさか自分が退職する日が来る
なぞとは想像することさえできなかったものです。

 しかし、本当に歳月はあっという間に流れていきました。この間に職場では労働組合
のとりくみのこと、運用職種の業務近代化、職種の一体化などとさまざまな動きがあり、
そのような中で自分が関わってきたこと、存在していたことを思い起こします。今回の
退職にあたり、正直に申せば、自分が依拠していたわが職種の今の状況をつぶさに見て
「じくじたる思い」を抱いたのも事実です。しかしさらに勝手な言い方ですが、私自身
は自分に嘘をつくこともなくただ純に、「じょーさん」らしく義を貫いたつもりでいます
ので、今はすっきりと落ち着いております。現在の心境は、プレッシャーもストレスも
どこかへすっ飛んで行ったような気持なのです。

 先日は古い写真を整理しておりましたら、若き日、独身貴族の過去の栄光?やら、妻
美代子との結婚式と仲間内で手作りの披露宴、空整宿舎での結婚生活、池田市での
共同保育(ひまわり)、保育運動(池保連)への没頭など…思い出の映像が、それは
いっぱい浮かんできました。「走馬燈のように」頭を駆け巡ります。縁起でもありません
が、人は死ぬ時の一瞬にこのような人生のフラッシュバックを観るそうですが、まさに
そんな感じを持ちまして少し感傷に浸ったものです。

 そしてあれほど転勤拒絶?をしていた私が結局は(大阪で採用→福井→大阪→熊本→
福岡管制部→福江→熊本→羽田保安大→鹿児島で退職)と転勤し、最後も含め通算で
12年ほどの単身赴任を経験したものでした。恋をし、失恋し、酒を飲み、ギターや
アルトサックスをやり…ハムは終生の趣味だと思っていたのですが今はQRTです。
こどもにも恵まれて(五女!)それはいっぱい楽しい経験をさせて貰いました。福管の
AEISでは夜な夜な奈多漁港でのメバル釣りとアサリ掘りが趣味。なんと言っても
福江でのミズイカ釣りは、一生忘れることのできない体験です。平成7年6月8日の夜
8時~10時の間に小田河原(オダゴウラ)の波止で1キロクラスを30パイ釣った
のが最高記録です。(ライトエースの車内がスミだらけになりました!)キビナゴが時期
になると湾内に湧くがごとく集まってきます。これを手製の投網で獲ったのも、カマス
を樫ノ浦で釣って一夜干しにしたのも、戸岐でイワシを釣って刺身で食べたのも忘れる
ことのできない思い出です。食事はいつも大波止の「うま亭」でお世話になりました。

 羽田の保安大の情報科長は私の分に余る職責でした。苦労しましたが、それだけに
卒業生を送り出す喜びも体験できました。当時の私と一緒させていただいた教官の方々
や学生にただただ「ありがとう」と言わせてください。平成14年5月26日、日曜の
早朝に驚愕の心筋梗塞に見舞われたことは、私の痛恨の失策でした。これは自分自身の
人生に対する姿勢も信条も大きく影響を受けた事件でしたが、その後はほかの人が同じ
ような体験をしないようにとの思いで心臓病体験関連のホームページを公開しています。
蛇足ですが、禁煙はもちろん服薬を続け、毎日プール通いをし、食事面で気をつけ体調
を維持できています。生命保険会社は決して私には近寄って来ませんが。

 航空局にて最後の勤務地になりました鹿児島FSCは、自分も多少なりとも関わって
きた運用職種の近代化=AP21のとりくみの成果としてできた施設です。そのような
ところへ先任として赴くことはとても嬉しいことでした。しかし、国民のためになる筈
の設備と制度が現実には今ひとつ充実しきれていないことも感じ、私なりに改善の努力
をしようと思っていましたが、なにせ末端管理職には何の力もなく、先任会議やどこで
泣こうがわめこうが「弱犬の遠吠え」とくらいにしか捉えられなかったようです。毎日
の現場業務に四苦八苦ではみなさんの役には立ちませんでした。力不足を謝ります。

 大阪での位置通報業務からGP業務、ATISへの移行。そして職員の運動会、
ソフトボ-ル、保育所のバザー、対市長交渉、保育所の保母さんとの合同ハイキング、
スキー、スケートやダンスパーティ。熊本でのATIS運用開始。パソコン雑誌への
プログラム投稿、福管での麻雀のことなども…いっぱいの甘かったり酸っぱかったりの
思い出が繰り返します。写真をよくよく見ると、いつも私の周りには親しい友人が居て
くれました。みなさんに本当によくしていただいたことを痛切に感じます。私の無精の
ためにほとんどその後のやりとりなく、過去の思い出としか残っていないことをとても
申し訳なく残念に思います。もしも万一、今までの私の言動や存在そのものが迷惑で
あったり、そのことで損害を被ったようなことがあったとしたら、それは申し訳なく、
退職に免じて平にご容赦をお願いします。そして、これを機会にまた新しい友人の関係
を築かせていただければ幸せに思います。

 今また熊本空港で新しい仕事に就いて、これまでの公務員生活とは全く違う環境に
いますが、充実した毎日を送っています。これも私というふつつか者を温かく育てて
くれた職場、職種、そして先輩やみなさんがあればこそです。今後は、私の得意?な
パソコン、インターネットを通じていくらでも交信できる状態にありますので、この
文明の利器を使ってさらにおつきあいをよろしくお願いします。末筆ながら連絡が
たいへん遅くなりましたことをお詫びしますとともに、重ねてお礼を申し上げます。

 ありがとうざいました。

(いただきましたお志は、妻とも相談して家族全員のためになり、かつ記念にもなる
ものに役立てさせていただこうと思います。ありがとうございました。)

本年8月に妻の母が亡くなりました。新年のごあいさつは失礼させていただきます。
2006年新しい年がみなさまにとってさらによいお年になりますよう。

謹白

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